【はじめに】
今回の問題は、以下の3点の「迷い原因」を元に作りました。
- A )コンパスの磁針の南北を間違える。
- B )地形の特徴物の形状・大きさを理解していない。
- C )方向確認の情報が抜けている。
A)ですが、「これパロディだろ。こんなことあり得ないよ」 と思われるかと思いますが、これが余裕のない状況だと起こりえることです。
B)は、「読図」は出来たが、「地形読み」が出来ない方の典型的なミス形態です。 等高線には、いろいろな形があります。それにより、いろいろな形状が出来上がります。 これらを地図上からイメージ出来ることが「地形読み」が出来るということになります。
C )は、「無意識の行動」の典型的なミスです。 例えば、登山道を180度逆に進んでしまった。なんで???? と思うミスも良く見かけますが、これが「無意識の行動」によるものが 多いんじゃないかと思います。
これらの解説は、【なぜ迷ったのかの解説】で書きます。
今回は、道の無い山の中に入っていったというバリエーションルート的な問題ですが 基本は、登山道を歩いていても同じです。
「地図を正確に読んで、地形を正確に読んで、方向を確認する」 ことが重要です。
なお、国土地理院の地図は、地図の上が真北ですが、磁石が示す磁北ではありません。 その為、コンパスの北の向きは、緯度にもよるが地図上で西側に少し(約7度)ずれ(偏角)ています。 各緯度でのこの偏角は、国土地理院の地磁気値を求めるを参照のこと。
【あなたの道迷いからの復帰度】
今回の探し方により、あなたの「道迷いからの復帰度」が分かります。
- 1)C 地点から先を一生懸命探した方
- 復帰度ゼロ:捜索隊の救助を待ちましょう。
- 2)ルート上を一生懸命探した方
- 復帰度30%:来た道を素直に戻りましょう。
- 3)地図全体を探した方
- 復帰度80%:迷った時は、この気持ちを忘れずに。
- 4)直ぐにC地点がどこだか分かった方
- 復帰度100%:オリエンテーリング向きかも。
ということで、どうでしたか?
1)、2)の方も、経験を積めば、3)になれますので安心を。
【解説図】
【問題の解説】
山頂から(図2)、
- a)「まずは、山頂の端まで移動し、
下山する方向を地図とコンパスで急いで確認し」
ということで、ここがこの問題の最初の重要ポイントです。
山頂の端をどのように確認したのかは分かりません。
さらに急いで方向を確認しています。 - b)そして、「尾根っぽいところを下って行きます」
ルート上の尾根の形状を理解していないようです。 - c )さらに「結構下ってきたところで、目の前に沢が出てきました。」
「山男さんは、地図を見て」
「沢はルート上に無いけど、もしかしてB地点まで下ってきてしまったか」
ここも、この問題の二番目の重要ポイントです。
ここは、思い込みでB地点まで来てしまったと。
でも、B地点が正しいかの確認をしていません。 - d)そして「それなら、この沢を越えれば緩やかな尾根に出るはず、その尾根を下ればいいやと」
「山男さんの予想通り、緩やかな尾根に出ました」
「緩やかな尾根を下って行きます。」
ここも、この問題の三番目の重要ポイントです。
沢を越えて緩やかな尾根に出ましたが、
ここでどちらの方向に下らないと行けないかを確認していません。 - e)ところが、その後
「緩やかな尾根の下っている方向をコンパスで確認すると、確かに南西の方向を指して」
「山男さんは、時間的な経過から、」
「大体、C 地点辺りにいるはず」と思いました。
「ということは、もう少し行くと尾根も傾斜がきつくなるはず、その前で左の沢の方向に下ればいい」
「ということで、進んで行くと、確かに尾根の傾斜がきつくなるところに出ました。」
ここの記載は、地図を読んで、地形も一応読んでいます。 - f)そして「よし、ここを左側に下ろう。」
「山男さんは、下る前に尾根と垂直の方向にコンパスを合わせ、
斜面を沢の方向に下って行きました。」
ここも方向を確認して進んでいます。 - g)さらに「沢のところまでくると、今度は、林道の方角にコンパスを合わせます。」
「ちょくちょくコンパスを見ながら森の中を直進して行きました。」
ここも方向を確認して進んでいます。 - h)そして「ところが、だんだん急になってきました。目の前には急な沢が。。。」
「林道までの間には、急な沢などありません。」
「自分がいるルートの周りを見て、ひょっとしてD 地点の沢にいるのかな」
これは、迷った時に考える典型的な思考で、
地図で確認してf)まで来て、それを正確に方向確認して
g)まで下ってきたのに、目の前に違った地形が現れると
なぜか、g)をDの方向にズラしてしまう。
これによって自分が正しいと思い込ませていることになります。
この時点で、自分は間違ったと判断すべきでしょう。 - i)さらに「それなら、これを登れば林道だね」
「左手の尾根に上がりました。」
「しかし、80mぐらい登りましたが、まだまだ尾根は上に続いています。」
「山男さんは、コンパスで尾根の下る方向を確認しました。」
「北西から北北西という感じなので、D地点と同じだよな?」
尾根の方向が同じでもDとは限りません。
周りの状況から判断して、全く違う場所にいることになります。
では、どうするかですが、
まずは、冷静になって(これが難しいですが)以下を考えましょう。
- @地図上で通ってきたルートで確実な地点を確認する。
- A今まで通ってきたルート上で、特徴物を思い出す。
- B@から、もし迷ったとするルートをA及び掛かった時間を考慮して探してみる。
まず@ですが、状況証拠的にe),f)が正しいと思われますが、
- その後の状況で、h),i)とありえない状況になっているので
- e),f)も間違った場所と判断すべきでしょう。
- ということで、残るはa),c ),d)になりますが、
- c ),d)を正しいと仮定しても答えは見つかりませんので、
- 最終的にa)と判断すべきです。
次にAですが、a)からi)までに出て来た特徴物になります。
Bは、時間的なことは、
- 「山男さんは、時間的な経過から、」
- 「大体、C 地点辺りにいるはず」と思いました。
ということで、C 地点と思われる場所は、 a)から距離的に本当のC 地点と変わらない距離だと思われます。
そこで、e)の形状に似た地形を地図上で探します。
- 南西方向の緩やかな尾根で
- さらに進むと尾根の傾斜がきつくなる。
見えてくるのは、1)から6)までの地点です(図3)。
- しかし、2)と3)は、その前の尾根の下る方向が南西ではありません
- ので省きます。4)は微妙なので残します。 6)は、6)地点まで来るにはなだらかな尾根でなく急な尾根を下りますので省きます。
次に、e)尾根の傾斜がきつくなる地点から、f)からi)までに該当するところを 探します(赤線)。
すると、
- 1)は、f)で林道に出てしまいます。
- 4)は、f)で沢がありません。
- 5)は、f)からi)まで当てはまります。
ということで、5)が当てはまります。
- 解答
- 正解:5−1)の地点
この例では、地図のエリア内に正解が存在しましたが、 最悪地図のエリア外に出ていると、完全に分からなくなります。 こうなると、来た道を戻るしかないですが。。。。
【なぜ迷ったのかの解説】
正解が5−1)の地点ということで、 なぜ、ここに来たのかは、図4の赤線が迷ったルートになります。
- a)で「山頂の端まで移動し」
このような平らな頂上では、遠くが見えないと方向感覚がマヒしてきます。
ここは、自分のいる位置から、下るべき尾根側の山頂の端の部分を
コンパスで方向確認して移動します。 - a)で「下山する方向を地図とコンパスで急いで確認し」
これは、コンパス操作の1,2,3に不慣れな場合に起こってしまう
信じられないようなA)のミスです。
すなわち、直進するような場合は、
1.自分のお腹の前で地図を進むべき方向に向け、コンパスの矢印も進みべき方向に合わせる。
2.コンパスのリングを廻し、リング内の矢印を地図の磁北線の北に合わせる。
3.コンパスのリング内の矢印とコンパスの磁北が重なるように体を廻す。
これで、3の状態を保てば、コンパスの矢印方向が進むべき方向です。
ところが、この問題の場所では、「正規ルート(図2の黄色線)」と「迷ったルート」では
丁度コンパスを合わせると180度反対方向になります。
余りコンパスを使わない、操作に慣れていない方が、この状態で余裕がないと
コンパスの北は赤色なのか白色なのかを考える余裕がなく、180度間違った
方向であっても不思議と思わないということが起こってしまいます。
ということで、二つのミスが重なり、180度反対方向に下ってしまったのです。 - b)では、「尾根っぽいところを下って行きます」
迷ったルートでは、だだっ広い尾根を下って行きます。
しかし、正規ルート上では、初めは尾根が不明瞭ですが
徐々に尾根の形になり、平らな部分に達し、そこから急になります。
この形状を地図から読み取れれば(地形読み)、間違ったルート上を進んでいれば
おかしいと思うはずです。
これはB)のミスです。 - c )では「結構下ってきたところで、目の前に沢が出てきました。」
目の前に出てきた沢の大きさをイメージできれば
B地点の沢と、迷ったルートのC )地点の沢では
全く異なりますので、コンパスで方向を確認することなく、
おかしいと気づくはずです。
これもB)のミスです。
B地点の沢は、幅も狭く、急な沢です。
迷ったc )地点の沢は、幅も広く、浅い沢です。 - d)では、「この沢を越えれば緩やかな尾根に出るはず、その尾根を下ればいいやと」
これがC )の無意識の行動のミスです。
地図上で「緩やかな尾根」「右に」「下る」という情報を読取り
頭にインプットしていれば、このミスは防げます。
しかし、「右に」が抜けていると、人間は無意識に
「緩やかな尾根」「下る」だけで行動を起こし
180度反対の方向に行っても、おかしいと思わない。
これが無意識の行動の怖いとこです。
例えば、頂上を目指し、沢を上がり稜線に出て、そのT字路を
左側は緩やかに下り、右側は登っているとします。正規ルートは左とします。
予め、地図でルートを確認していないと、
無意識に右側に行ってします。
これは、頂上を目指しているので、無意識に登る道が
進みべき道と潜在意識に刷り込まれているからです。
これを防ぐには、「意識の行動」に変える必要があります。
それには頭に「意識付け」を行います。
すなわち、前日や山行を開始するまでに山行ルートを頭に叩き込んでおくことです。
そうすることにより、この「無意識の行動」が「意識の行動」に変わります。
ということで、その後は、正規ルートと同じような地形であったためf)まで 行ってしまったことになります。
【この後】
自分の居場所が地図上で特定できれば、 そこから安全に復帰可能な最善のルートを探せます。
これが、戻ることが最善の場合もあるし、 もっと最短のルートもあります。
山男さんの場合は、図4の青線のように、今いる尾根を、そのまま登り 本来通るはずだった尾根を横切り、なだらかな斜面を横切り、 山道に復帰し、この山道が正しいかを確認するために A地点に向かうルートがいいでしょう。
ここで、自分が想定したルート上で、地図と異なる場合は、 (さらに、ミスをする場合もあるかもですが) 自分が想定した場所ではないという可能性大ですので、 この場合は、元来たルートを戻るしかないです。
元来たルートに復帰出来ない場合は、遭難なので、 遭難の場合の対処法をネットで探してみてください。