【はじめに】
今年後半の自分の山行を見つめ直すと、トレイルの正規ルートをはみ出して森の中を進むケースが沢山ある。
やはり自分の性格上、単なるトレイルを走るだけでは物足りないという感じで、「ここ走れそうだ」と思えば、 迷いなく森の中に突っ込んで行く。
やっぱり、どうしてもオリエンテーリングでの森の中を走る爽快感が身に染みついている感じですね。
ということで、「トレイルランニング(略してトレラン)」ではなく 「オフトレイルランニング(略してオフトレラン)」について考えてみた。
1.オフトレランの定義。
- @トレイルがない、通行可能なところを走る。
- Aタイム競争ではないので、安全に楽しく森の中を満喫する。
注)森林の中や草原等で立ち入り可能で走行可能なエリアを走る。
2.オフトレランの条件
- @安全なエリアであること。
- A技術力があること。
- B自然を大切にすること。
- 注)@は、地図上で崖や急峻な地形等の危険箇所が記載されているエリアは避ける。
- A2万5000分の1地形図とコンパスで直進が可能。
- Bこれは当然として、特別保護地区には入らない、物捨て、採取等は、禁止。
2-@の場所
問題は、そのような場所があるかが一番大事。
例えば、今まで行ったことのある丹沢では、
- ・大倉から牛首までの三の塔尾根とか、
- ・蛭が岳から下った姫次への平坦なエリアは最高かも。
さらに、スタートからゴールまでの行程でオフトレランをするのではなく、 (これは、オリエンテーリングの地図がないと無理) 行程の一部箇所で実施する。
3.オフトレランの用具
以下は、最低限必要な装備。
- ●地図
-
国土地理院の2万5000分の1地形図に
磁北線、距離目安線、縮尺は1万分の1(見やすく丁度良い)を印刷。
厚めのビニールに入れる。
ただし、より詳細な地図があれば(丹沢のGoogleマップ)、それを使用。 - ●コンパス
- オリエンテーリング用のコンパス(シルバコンパスかサムコンパス)
- ●靴
- トレラン用シューズ
- ●服装
- 藪こぎも想定して、長袖、長ズボン、手袋
- ●食糧等
- 飲料水:ORSがベスト。ポカリスウェト等のスポーツドリンクでもよい。
- 食糧 :走ることを想定し、重くなく、カロリー高いもの、ジェル、小さいおにぎり、お菓子バー、大福等。
- ●入れ物
- ザック、ポシェット、クマ避け小型カウベル。
- ●その他
- 時計、デジカメ(所要タイム算出)、GPS、その他必要に応じて決める。
4.オフトレランの時期
日本の里山では11月から4月に掛けてがベスト(クマが冬眠中ならベスト)。
標高が高ければ、雪がない時期等。
5.オフトレランの技術力
以下を基本に、常に現在位置を把握しながら進める技術力が必要です。
- 1)2万5000分の1地形図の読図能力
- 2)コンパス操作
- 3)1)、2)による直進が可能。
5−1) 読図能力
以下が理解できないと、森林の中に入ったら現在地が分からなくなります。
- ・等高線の尾根、沢、鞍部、凹地、コブ等が理解できる。
- ・どちらが低くてどちらが高いか、傾斜が急か、緩やかかが理解できる。
- ・地図上の特徴物(植生(針葉樹、広葉樹)、岩、崖、道、小川、人工特徴物等)が理解できる。
5−2) コンパス操作
- ・地図の正置
- @お腹にくっ付けて地図を持ち、地図上の現在地から自分の行きたい方向を自分の正面に向ける。
- A@の状態を保ちつつ、コンパスを地図にあてる。
- B@の状態を保ちつつ、コンパスの磁北線と地図の磁北線の北が一致するまで体を回す。
- ・直進
- 地図の正置のBでシルバコンパスの場合は、
- Cリング内にある矢印の方向をリングを回して磁北線の北に合わせる。
- D後は、常にコンパス内の磁北線の北とリング内の矢印の北が合うように細かく確認しながら進む。
- サムコンパスの場合は、常に地図の正置をすれば良い。
これで、正面が進むべき方向になります。
注)サムコンパスの場合は、常に地図とコンパスを同時に持つので、Aが省略できる。
注)ここで重要なのは、@のお腹にくっ付けて地図を置くことです。
目の前とか横とかお腹から離すとかすると正しく方向を示し難くなります。
5−3) テクニック
- @大局観で大きな特徴物を目標物にする。
国土地理院の2万5000分の1地形図は、
- 地表の特徴物が極端に少ない。
- 道も信用できない。
- 等高線の形も不明瞭である。
なので、信用できるのは、形が不明瞭な等高線しかない。
ということで、細かな地形は、無視し、大きな地形を基準に考えて進むべき目標物を決める。
例えば、平らな部分が300m続いて、急な部分が出てくるような場合。 平らな部分にある小道や小川などは無視して、急な部分にある大きな尾根、沢に 目標物を設定したルートを考える。
- A距離と時間を意識する。
地図上で目指す地点までの距離を把握し、 現在までの森の中の状況から、どのくらい時間が掛かるかを常に意識する。
これはオリエンテーリングの高級テクニックである。
オフトレランでは、大まかな意識を持ち、余りにも時間が掛かり過ぎた 場合の修正(リロケーション)に使用する。
大事なのは、5−3)@の決め方で、如何に単純で分かりやすいルートを決めるかである。
なおAを意識するあまり、まだ手前なのに迷ったなどと考えるとド壺にはまる。
- B進むべき方向の修正(リロケーション)
@で決めたルート近辺に地図上に記された大きな特徴物があり、 そこを通過した時は、その大きさ、方向、経過時間等を根拠に 地図上で確認し、確かにその特徴物であれば、そのまま進み、 進むべき方向がずれていれば、現在位置を基準に再度5−3)@からやり直す。
すなわち、想定ルート上から大きくずれていなければそのまま進み、
修正が必要な状況であれば、現在地から5−3)@で目標物まで最短で行けるルートに修正する。
- C国土地理院の地形図の等高線の特徴
国土地理院の2万5000分の1地形図の等高線は、 実際見た目より、平らに記載されている。
すなわち、沢などは、深くエグレているのに、緩やかに凹んでいるような感じで 記載されている。
尾根も同じで、両側が急な尾根も、地図上では緩やかな尾根に記載されたり、 尾根が二俣に分かれているのに、地図上は、なんか尾根っぽい感じに少し出っ張って ひとつの尾根が記載されている。
これらは、5−3)@を明確に設定していれば、 このような地図上の間違いも無視して、決めたルートを進むめば良い。
例えば、ピークを登らずに森の中を等高線と平行に進み、 反対側の西に向かう緩やかな尾根上に到達する場合、
その途中に地図上ではなんか尾根っぽい感じに見える地点で 現地では明確な尾根があった場合に、その尾根の方向と そこまでの距離、尾根の大きさ、尾根の傾斜、尾根の先の状況から判断し、 目的の尾根かどうかを判断すればよい。
- Dエーミングオフ
これはオリエンテーリングの高級テクニックで、
あるA地点からB地点まで行くときに、
A地点からB地点までを直進した場合、
正確にB地点まで到達することは困難で、必ず右か左にずれるため、
道に出た場合にどっちに行っていいか迷うことになる。
A地点からB地点の間に距離に応じて、別の特徴物を置き、 そこを通過して行くようなルートを考える。
すなわち、直進ルートを分割することで、B地点まで確実に スピードを落とさすに走りきるテクニックです。
国土地理院の地図でどこまで、これを有効に使えるかは、 地図と現地の状況に依りますね。
例えば、比較的平らな部分で小道のT字路まで直進する場合 そのまま直進し、道に出た時に、T字路の右側に出たのか 左側に出たのか判断は難しい。
このような場合に、例えば左側に絶対出るルートを考えればよい。
- Eルート選択
これは、オリエンテーリングMAP記載の細かな特徴物を繋いで 如何に早く走り切るかのテクニックなので、
オフトレランのような2万5000分の地形図では、
なにしろ大きな特徴物を繋げた単純で迷わないルートを考えればよい。
- F危険物回避
これは、経験上の問題で、現在地の状況により最適な回避策を考えればよい。
5−4)それでも迷った場合の修正(リロケーション)
目的の場所を定めて直進した場合に、時間、距離、周りの状況からして、どうも間違った地点にいるのでは という状況に陥った場合。
まずは、自分が間違えたと認識すること。
自分は、間違ってないと思うと、ド壺にはまる。 なぜなら、自分は間違ってないので、現在地から地図に記された付近の 特徴物を見つけようとする。当然、間違った場所にいるので、 似たような場所はあっても、それと確認できる場所ではない。
最後まで自分が間違ってないと考えると、 現在地点の周りを探しまわり、そのうち疲れて遭難に陥る。
そうなる前に、「自分は間違った」と思うことが大事。
そこで冷静になって立ち止り。
- 自分が来たルート。
- 自分が確認した特徴物。
- 自分がコンパスでどのように方向を確認してたか。
- 最後に確認した確実な特徴物。
- その特徴物からの時間、距離。
- その特徴物から現在地まで目にした風景・特徴物
そして、現在地の状況
例えば尾根なら、その尾根筋の方向、傾斜、大きさ、周りの状況
を確認し、
それに近い地点を地図上で探す。
地図上でその地点が浮かんだ場合は、
その地点と仮定して、現在地より目的地まで行く最短ルートを考える。
そして、それが最後に確認した特徴物まで戻るより大分早ければ、
(早くなければ最後に確認した特徴物まで戻る)そのルートに変更する。
ただし、そのルート上を進み、目の前の地形が地図と違えば、
判断した地点が間違っているので、最後に確認した特徴物まで戻る。
地図上でその地点が浮かばなかった場合は、
最後に確認した特徴物まで戻る。
ここで大事なのは、「最後に確認した特徴物まで戻れない」場合。
これは、確実に遭難です。
遭難した場合どうするかは、山の参考書を参照してください。
こうなるのは、ここまで書いてきた内容を理解し、確実に実践する技術力がないためです。 このような方は、森の中に入っては行けません。